コラム
Column
2026.04.08

シリンダーオルゴールの弁数の違いとその特徴│ニデック オルゴール ショールーム(Vol.3) 

皆さんも一度はオルゴールが奏でる優しい音を聴いたことがあると思います。また旅行の思い出や友人へのプレゼントとしてシリンダー式のオルゴールを購入したことがあるという人も少なくないと思います。
でも、「シリンダーオルゴールにはどんな種類があるの?」「◯◯弁って書いてあるけど何のこと?」という疑問を持ったままの方も多いと思いますので、今回はこうした疑問をお持ちの方に向けて、本記事ではシリンダーオルゴールの種類・仕組み・価格帯・音の違いなどを簡単に解説していきますます。

【シリンダーオルゴールの「弁数」による種類】

前回はシリンダーオルゴールとディスクオルゴールの違いについてご説明させていただきましたが、今回はシリンダーオルゴールに特化してその種類と特徴について説明していきます。
(前回ブログ:https://nidec-orgelshowroom.com/column/column-1592/

オルゴールの中には蓋をあけると音を出す機械部分(ムーブメント)が見えるようになっているものが多くあります。そしてゼンマイを巻くと、ゆっくりと円筒形をした金属の筒のようなもの(シリンダー)が回り始めます。そのシリンダーの表面には、小さな突起がたくさん並んでいて、この突起が、金属の櫛(くし)のようなパーツ(振動板)の櫛歯(弁)を順番に弾いていき、音楽が流れます。

これがシリンダーオルゴールが曲を演奏する仕組みなのですが、そんなシリンダーオルゴールにも、豪華な箱(筐体)に収められた大きなもから、手のひらサイズの小さなオルゴールもあります。また、動きがあるからくりオルゴールや、グランドピアノや鏡台の形をした入れ物に収められたものなど、色々な種類があります。そんな様々な種類がある中で、シリンダーオルゴールを分類する際には、基本的にはムーブメント(音を出す機械部分)の「振動板の櫛歯の本数=弁数」によって分類(種類分け)がされます。もちろん入れ物(筐体)の大きさや形で分類する場合もありますが、オルゴールが奏でる音に注目する場合は、「弁数」の違いで分類します。
シリンダーオルゴールを弁数で大きく分けるとすると,
1.18弁(最も一般的・低価格)
2.23弁(音数・演奏時間アップ)
3.30弁以上(豊かで長い演奏を楽しめる高級モデル)

ということになります。

このように、シリンダーオルゴールを弁数で分けるのは、「弁数が増えるほど音の数が増え、より豊かで複雑なメロディー表現が可能になる」という違いが最も大きな理由としてあります。
それではここからは、それぞれの特徴を順番に見ていきます。

【最も一般的なオルゴール「18弁シリンダーオルゴール」】

皆さんがお土産屋さんや雑貨店でよく見かけるオルゴールの多くは「18弁シリンダーオルゴール」です。
その18弁シリンダーオルゴールの特徴は、
・コンパクトで低価格(2,000円〜10,000円程度)
・約15秒の短いフレーズを繰り返して演奏
・シンプルで軽やかなメロディー
と言えます。

ムーブメント(機械部分)は手のひらに収まるほどの小さなものですが、ゼンマイを巻いてシリンダーが動き始めると、18本の弁(金属の櫛歯)がシリンダーの突起に弾かれて、音を奏でます。そしてシリンダーはおよそ15〜16秒ほどで1周しながら、ゼンマイの力がなくなるまで回り続けます。

つまり、18弁シリンダーオルゴールが演奏できるのは短いフレーズで、ちょうど曲の「サビ」や「印象的なメロディー」の部分を繰り返して演奏していくことになります。

演奏できるメロディが少々短いと感じれる方もいるかもしれませんが、でもそれが18弁オルゴールのいいところでもあり、短いからこそ、何度も繰り返されるそのメロディーが、記憶や感情をやさしく呼び起こしてくれます。

価格も手頃で、気軽に手に取れることから、「旅行のお土産」や「記念日のちょっとした贈り物」「インテリア雑貨」として長く愛されきましたし、今も多くの人に楽しまれています。

また18弁シリンダーオルゴールの機械部分(ムーブメント)はコンパクトで小さなサイズなので、からくりオフゴールやぬいぐるみオルゴールなどの様々な種類のオルゴールのムーブメントとして使われています。昔からあるグランドピアノ型のオルゴールやバレリーナがクルクルと踊るオルゴールの多くも18弁シリンダーオルゴールのムーブメントが使われています。そのため18弁シリンダーオルゴールには、お部屋やデスク周りを飾るインテリアとしてオシャレなものや可愛いらしいものも数多くあります。

【より豊かな表現ができる「23弁シリンダーオルゴール」】

18弁のシリンダーよりも櫛歯(弁)の本数が5本多い23本ある振動板を使っているのが「23弁シリンダーオルゴール」です。見た目は18弁シリンダーオルゴールとあまり変わらないのですが、18弁のものより振動板が少し幅広く、シリンダーもひとまわり直径が大きくなっています。価格は18弁シリンダーオルゴールよりも高いものが多くなりますが、製造工程は18弁オルゴールとほぼ同じで、比較的に安価に作れ、同じ曲の大量生産も可能なオルゴールの種類です。

この23弁シリンダーオルゴールは、23の音程を使ってメロディーを演奏することができますから、18弁よりも音数が多い豊かなメロディーに編曲された曲の演奏が可能になります。またシリンダーの直径が18弁シリンダーオルゴールより大きいことで演奏時間が約30秒に伸びます。18弁用のシリンダーが1周する時間は約15秒でしたから、18弁シリンダーオルゴールが4小節程度のメロディーを演奏するのに対し、23弁オルゴールは8小節程度のメロディー演奏が可能になります。つまり、18弁が“ワンフレーズ”だとすると、23弁は“ワンコーラスに近いメロディー”で演奏することができます。23弁シリンダーオルゴールであれば、イントロとサビがつなげて演奏したり、広がりのあるメロディーに編曲したりと言うことが可能になり、音楽としての満足感がぐっと高まります。

そのため「思い出の曲をしっかり楽しみたい」「大切な人への贈り物にしたい」という方に選ばれることが多いタイプです。

最後に「23弁のシリンダーオルゴールの18弁との違い」を簡単に整理しておくと、
・約30秒(約8小節)の演奏が可能(18弁は約15秒)
・18弁より音数が増えることで、23弁はより表現豊かで、複数フレーズが可能
・23弁のほうが価格はやや高め
ということになります。

【音の美しさを極めた世界|30弁以上の高級オルゴール】

18弁シリンダーオルゴールと23弁シリンダーオルゴールについてご紹介してきましたが、さらに上位に位置するのが、30弁・50弁・72弁などの高級オルゴールです。

30弁以上のシリンダーオルゴールは、18弁や23弁オルゴールよりも長いメロディー演奏が可能であるという特徴がありますが、それ以上に“奏でることができる音の質”や“製造工程”に大きな違いがあります。

オルゴールは弁数が多いものほど音数が多く深みのある豊かなメロディを奏でることができます。そういった意味でも30弁以上のシリンダーオルゴールは高級オルゴールとして位置づけられるのですが、30弁以上のシリンダーオルゴールが「高級」とされ、単なる「音の出る箱」ではなく「ひとつの工芸品」とも位置づけられる理由のひとつには、「精密で手間をかける製造工程」にあります。特に振動板の弁を弾く「シリンダーの製造方法」は、18弁や23弁のものとは大きく違います。

18弁・23弁のオルゴールのシリンダーの表面に施された突起は金属製の型による「プレス工法」で作くられています。シリンダーの筒の部分となる金属板を2枚の金属型で挟んでプレスすることで金属板の表面に突起を作ります。18弁や23弁のオルゴールは、この金属型を使ったプレス工法でシリンダーを作っているため、短時間で大量の生産が可能で、しかも低コストで作れるのです。

一方で、30弁以上のシリンダーオルゴールのシリンダーをよく見ていただくとわかる通り、振動板の弁を弾く突起は「細いく短い針」のような形状をしています。この突起は、「ピン」と呼ばれ、1本1本シリンダーに穴を開けてそこに埋め込まれたものです。シリンダーがゼンマイの動力で回転すると、この細くて硬いピンの先が、振動板の櫛歯(弁)を引っ掛けて、上に弾き上げて音を出します。

このシリンダーにピンを打ち込む作業工程は、今は機械を使って行っているものの、人の手で調整しながらひとつひとつ丁寧に作り上げていきます。そのため30弁以上のシリンダーオルゴールは、製造に時間がかかり、同じ曲でも短時間に大量に生産することはできません。

また、振動板も30弁以上のものは多くの手作業を経て作られます。特に音の調律や部品の組み立ては高い技術を持つ技術者の手作業で行われます。18弁や23弁のシリンダーオルゴールの振動板の作製はほとんどの工程が自動化されていて、工場のラインに素材や部品となったパーツを流していくことで短時間に多くの製品を作ることができます。

一方、30弁以上の振動板は原型を作るまではある程度自動化されているようですが、正確な音程で音を出すための調律は「イヤホンから耳に聞こえる実際の音と、周波数センサーに表示される周波数の波形見ながら、櫛歯を一本一本削って調律する」といった専門的な高い技術を持った人にしかできない手作業で行われます。

またシリンダーや振動板の基盤への取り付けと組み立ても手作業で行われます。特に振動板の基盤への取り付けは、音を確かめながら、振動板が最も良い音色を奏でる位置に手作業で微調整しながら行われます。
まさに、人の感覚と技術によって仕上げられる世界です。

これらの振動板の調律や取り付け・組み立ては、高い専門技術を習得し、長い時間の経験を積み重ねた熟練の技術者にしかできない作業で、国内のオルゴールムーブメントのほぼ100%を製造しているニデックインスツルメンツ㈱にも、その技術者は数名しかいません。
このように30弁以上のシリンダーオルゴールは、細かな手作業で精密に組み立てられて行くので、音数が多いだけでなく、澄んだ綺麗な音を奏でることができるのです。製造に時間と手間がかかる分、価格も高くなってしまいますが、18弁や23弁のシリンダーオルゴールとは一味違う美しい音色を楽しむことができます。

30弁以上のシリンダーオルゴールは、「特別な人への贈り物」としても好適ですが、素敵な音色を楽しむために「手元におく一生もの」としてとして自分用に購入されることも多いオルゴールです。

【まとめ│シリンダーオルゴールの選び方】

今回は弁数の違いによるシリンダーオルゴールの分類と特徴をご紹介してきましたが、最後に、皆さんがオルゴールを購入する際にの参考となる選び方のポイントを、キーワードで整理しておきます。

①価格面で選ぶ
・気軽に、手軽に → 18弁
・少しこだわって、ワンランク上のオルゴール → 23弁
・一生ものとして楽しむ→ 30弁以の高級オルゴール

②音の豊かさで選ぶ
・シンプル 、思い出のワンフレーズ→ 18弁
・長めのメロディー、聴きごたえ → 23弁
・重厚、芸術性 、長いメロディー→ 30弁以上の高級オルゴール

③用途で選ぶ
・自分や友人への手軽なお土産 → 18弁
・プレゼントや記念の品 → 23弁
・特別な人への贈り物 、一生もの→ 30弁以上の高級オルゴール

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今回はシリンダーオルゴールの弁数を軸にして、その種類や特徴、さらに選び方についてもご紹介させていただきました。しかし、オルゴールは音を出す機械部分であるムーブメントだけがすべてではなく、そのムーブメントを収める筐体(きょうたい)と呼ばれる箱や、その筐体に施された装飾やデザインも、オルゴールを選ぶ大きなポイントとなります。このあたりについても後々のブログでご紹介させていただきます。

次回のブログでは30弁以上の高級シリンダーオルゴールについてもう少し詳しくご紹介しながら、音色の美しい高級オルゴールの魅力をご紹介させていただきます。

(Akio Hisada/ニデックインスツルメンツ)

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