コラム
Column
2026.04.25

50弁・72弁オルゴールの違いと魅力|2回転・3回転で曲を演奏できる仕組みを解説│ニデック オルゴール ショールーム(vol.5)

【50弁・72弁シリンダーオルゴールとは】

このブログではこれまでに、シリンダーオルゴールの弁数の違いを中心にお話してきました。
オルゴールの種類・仕組み・選び方|シリンダーとディスクの違い・弁数まで徹底解説|(Vol.2) 
シリンダーオルゴールの弁数の違いとその特徴│(Vol.3) 
30弁以上の高級オルゴールの仕組み・手作業工程・音質の違いを徹底解説│(Vol.4)

現在、国内でニデックインスツルメンツ㈱が製造販売しているシリンダーオルゴールの振動板(音を出す櫛歯)には、18弁・23弁・30弁・50弁・72弁の5種類があります。
弁数が多いほど、幅広い音域(音階)を使った、和音の豊かな深みのあるメロディーを奏でることが可能です。

今回は、その中でも最も弁数の多い50弁・72弁シリンダーオルゴールの仕組みについてご紹介します。
50弁・72弁オルゴールは、1台で複数のメロディーを演奏したり、約2分前後の長い楽曲を演奏できる高級モデルです。これは、30弁以下のオルゴールにはない「1周ごとにシリンダーを横スライドさせる仕組み」によるものです。
このコラムでは、この仕組みをわかりやすく解説していきます。

【シリンダーの直径】1周の演奏時間を決める仕組み

シリンダーオルゴールは、シリンダーが1周(1回転)する間に、突起やピンが振動板の櫛歯(弁)を弾き、メロディーを奏でます。
つまり、演奏できるメロディーの長さは「シリンダー1回転の時間」によって決まります。
 ・18弁:約15秒
 ・23弁:約25〜30秒
 ・30弁:約30秒
このため、30弁以下のシリンダーオルゴール1回転で演奏できるのは楽曲の一部分であり、そのフレーズを繰り返す仕組みになっています。

一方、50弁・72弁オルゴールは振動板の幅が広いため、シリンダーの長さだけでなく直径も大きくなり、1回転の時間は約40秒と長くなります。

【最大の特徴】長時間の演奏や複数曲を演奏ができる仕組み

50弁・72弁オルゴールは、1周約40秒の演奏に加え、2周目・3周目で異なるメロディーを演奏できる仕組みを持っています。
18弁・23弁・30弁オルゴールが同じメロディーを繰り返すのに対し、50弁・72弁では以下のような演奏が可能です。
・2周目:1周目とは異なるメロディー
・3周目:さらに別のメロディー

つまり、「約40秒 × 3周 = 約120秒(約2分)」の演奏が可能となり、J-POPや映画音楽ではフルメロディー、クラシックでも聴きごたえのある編曲を楽しめます。
さらに、1周ごとに異なる楽曲を割り当てることで、1台で3曲まで演奏することも可能です。

【仕組み①】弁(櫛歯)の形状の違い

では、なぜ1つのシリンダーで異なるメロディーを演奏できるのでしょうか。
まず注目すべきは、振動板の櫛歯(弁)の先端形状です。

50弁・72弁シリンダーオルゴールの振動板の櫛歯(弁)の先端の形状をよく確認してみてください。右の画像は、50弁・72弁の振動板の櫛歯の先端と18弁の振動板の先端を並べた画像ですが、18弁などの30弁以下の振動板の櫛歯(弁)の先端は直角に削られていて平らな形状になっていて、櫛歯の先端に隙間はほとんどありません。それに対して50弁・72弁の振動板の櫛歯の先端は細く尖っていることがわかると思います。

そして、先端が尖っている分だけ、先端の両脇には広い隙間ができています。この構造により、ピンが弁を弾く場合と、隙間を通り抜ける場合が生まれ、複数の演奏パターンを実現しています。

【仕組み②】横スライドするシリンダー

そして重要な仕組みのもう一つが、シリンダーの横スライド機構です。
回転し始めたシリンダーと振動板の接点をじっくりと見ていると、振動板の櫛歯(弁)を弾かずに、櫛歯の先端と先端の隙間をすり抜けていくピンがあることが見て取れます。
さらに、シリンダーがの回転が1っ終始終わった時点でシリンダーをよく見ていると、シリンダーが1周し終ると、シリンダーが少しだけ横にずれるのも見て取れます。1瞬のことなので見落としがちですが、50弁や72弁のオルゴールは1周ごとにシリンダーがほんの少しだけ右や左に横ズレしてしてから演奏を続けます。

もうおわかりかと思いますが、50弁・72弁オルゴールでは、1本の櫛歯に対して2列または3列のピンが配置されており、
・1周目:1周目用のピンの列が弁の先端に
・2周目:2周目用のピンの列が弁の先端に移動
・3周目:3周目用のピンの列が弁の先端に移動
というように、シリンダーの横スライドによって弾くピンの列が切り替わります。
この仕組みにより、2周または3周で1つの楽曲、または複数曲の演奏が可能になります。

【選び方】50弁・72弁オルゴールの見分け方

高級オルゴールを選ぶ際は、まず弁数を確認しましょう。
・「50弁」「50N」などの商品説明での表記
・蓋を開けたときのシリンダーの長さや振動板の幅
以前のブログでもご紹介した通り、商品プライスカードなどに「50弁」もしくは「50N」などの表示があると思いますので、高級オルゴールを選ぶ時には、まず弁数表示を探して確認してください。また、50弁以上のシリンダーオルゴールのほとんどは蓋を開けるとシリンダーや振動板などのムーブメント(機械部分)が見えるようになっていますから、シリンダーの長さや振動板の幅を見れば、どれが50弁や72弁のシリンダーオルゴールであるかを見分けることができます。

そして50弁・72弁の高級オルゴールには、蓋の裏や背面に下のようなラベルや金属プレートが貼られていて、それを見ればシリンダーが何周で1セットになっているか、そしてどのような曲の構成になっているのかがわかるようになっています。

画像の左側のラベルには、「72NOTE:愛のあいさつ:(3 parts)」と印字されていますが、
 ・弁数:72弁シリンダーオルゴール
 ・曲目:エルガーの曲「愛のあいさつ」
 ・3回転で1曲に編曲して演奏
という演奏内容であることを表しています。

右側のラベルには「50NOTE:幻想即興曲:ノクターン:別れの曲」と印字されていますが、
 ・弁数:50弁シリンダーオルゴール
 ・曲目:ショパンの3曲
 ・1回転ごとに3曲を演奏
であることを表しています。

【まとめ】50弁・72弁オルゴールの魅力

50弁・72弁の高級シリンダーオルゴールは、
 ・幅広い音域による豊かな音色
 ・高度な編曲による美しいメロディー
 ・1台で長時間の曲や複数曲を演奏
といった魅力を持つ、ワンランク上のオルゴールです。

コレクションとして楽しむだけでなく、
 ・卒業・入学
 ・結婚・出産
 ・長寿祝い
など、大切な人への贈り物としても多く選ばれています。

選ぶ際は「曲」だけでなく、「筐体(きょうたい)」も重要なポイントです。オルゴールの箱は単なる入れ物ではなく、音を響かせるための重要な音響パーツでもあります。

次回は、この「筐体」について詳しくご紹介します。

(Akio Hisada/ニデックインスツルメンツ)

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